研究課題
高齢者の転倒予防プログラムは、主に転倒リスクに関連する身体的機能(下肢筋力、バランス能力など)の向上を目的としている。しかし、転倒を回避する動作、すなわち外乱に対してバランスを崩したときに支持基底面を拡大させる代償的ステップ動作に関する評価方法、エクササイズは提案されていない。高齢者の転倒、特に側方、後方への転倒は大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折など移動能力を著しく損なう障害に発展するケースが多い。高齢者はステッピング反応性が鈍化するだけではなく、適切にステップできないために脚がもつれたり、引っかかったりして転倒を回避できない。本研究では高齢者の前後左右方向の代償的ステップ動作特性を明らかにし、転倒回避に有効な代償的ステップの評価、および改善エクササイズの提案を目的とした。65~90歳の在宅自立高齢者80名の左右側方リーチ動作における重心制御限界突破後の代償的ステップを計測し、転倒リスク得点との関係を検証した。左右ともスライドストップした(S-S)群(19名:75.9±5.4歳)、一方のみスライドストップした(C-S)群(25名:78.4±6.4歳)、左右ともクロスステップした(C-C)群(36名:75.4±5.3歳)に分類された。転倒リスクの推定には、出村の転倒リスクアセスメントを利用し、リスク要因(易転倒性、身体機能、疾病・身体症状、環境、行動・性格)ごとに得点を算出した。ADL得点は、文科省ADL調査票を利用した。一要因分散分析の結果、ADL得点、および身体機能、疾病・身体症状、環境の転倒リスク得点に有意差が認められ、いずれもS-S群がC-C群より劣る、またはリスクが高かった。最終年度では、高齢者の代償的ステップを改善するためのエクササイズによる介入を実施し、その効果を検証する。
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