1. 自律神経機能の低下は、循環器および代謝疾患の発症・進展と密接に関連している。自律神経機能の低下には、様々な「遺伝要因」と「環境要因(生活習慣)」が複雑に関与していると考えられ、これら要因の多面的な解析は、自律神経機能の改善に加えて、関連疾患の個人に最適な予防法の実現において大変重要である。 2. 若年健常者(大学生)約130名を本研究の対象者とした(本学の倫理委員会の承認の下、文書と口頭による十分な説明の後、自由意志に基づく文書による同意を得ている)。身長や体重など基礎的な身体測定の後、自律神経機能(心拍変動解析)、胃運動機能(胃電図)、末梢血管機能(手掌の冷水負荷試験)を測定した。さらに食習慣や生活習慣を食物摂取頻度調査票および生活習慣調査票により調査した。 3. レプチン遺伝子(LEP)多型(-2548A/G)とレプチン受容体(LEPR) Gln223Arg多型について、関連解析を実施した。LEP-2548A/G多型のGアリル保有者で、非保有者に比してBMIおよび収縮期血圧が低値を示した。LEPR Gln223Arg多型のArg保有者で、標準体重(BMI=22)以上の群でのみ拡張期・平均血圧が高値を示した。自律神経との関連では、LEPR 223Arg保有が標準体重以上の群で交感神経活動の低下と関連することが明らかとなった。さらに、両多型ともに脂肪摂取比率の低下と相関することが示された。胃電図との関連解析の結果、LEP-2548A/G多型と空腹時胃電気活動(胃電気周波数および正常周波数帯のパワー)に負の相関が見られ、LEPR Gln223Arg多型と食後胃電気活動(正常周波数帯パワー)に正の相関が認められた。以上の結果から、LEP-2548A/G、LEPR Gln223Arg多型は自律神経活動・胃電気活動・食嗜好との関連性を有しており、若年時から血圧やBMIの差となって顕在化し始めている可能性が示唆された。レプチン(受容体)を含む各種遺伝子多型の情報が、関連疾患の発症・進展の予防において有用な指標となる可能性が期待された。
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