研究概要 |
全身性炎症と身体活動の関連性を調査するために、抗炎症性サイトカインであるアディポネクチンと身体活動の関連について検討し[Interleukin(IL)-1β,IL-6、IL-8、IL-10、IL-13,IL-15,Tumour-necrosis factor(TNF)-αと、これらのサイトカインの遺伝子多型は現在、測定・解析中]、以下のような知見を得た。佐賀市民コホートに参加した1026名(年齢40-69歳、男性424名、女性602名)のトータル及び高分子アディポネクチンの血中濃度を測定し、身体活動計(ライフコーダー)を用いて測定した身体活動レベル(強度と時間)との関連性について調査した。その結果、身体活動量の指標であるPAL(Physical Activity Level)とトータルアディポネクチンの間に正の関連の傾向が認められた(P=0.07)。すなわち、1日のエネルギー消費量が多い者ほどトータルアディポネクチン濃度が高い傾向にあることが分かった。さらに、歩数や中強度(3.0-6.0メッツ)の身体活動量はアディポネクチンレベルに影響しなかったが、性別や年齢、BMIで補正しても低強度(<3.0メッツ)の身体活動の量とアディポネクチン濃度(トータルと高分子の両方)の間に正の関連が認められた。すなわち、歩行レベル以下に相当する軽強度の身体活動量が多い者ほどトータル及び高分子アディポネクチンのレベルが高値であることを見出した。本研究の結果は、軽強度の身体活動量を高めることで抗炎症作用をもつアディポネクチンを増加させる可能性を示唆するものである。具体的には、軽強度の身体活動量を1日当たり1[メッツ×時間(h)]増やすと(例えば、3メッツの歩行20分間に相当)トータルアディポネクチンで0.5μg/mlの増加が期待できることになる。本研究により、アディポネクチンのレベルを高めるために必要な身体活動の質(強度)と量が明らかとなり、全身性炎症の予防のための身体活動指針の作成に役立つものと思われる。
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