研究概要 |
血中炎症性サイトカインの上昇などにより特徴づけられる慢性炎症が、生活習慣病に共通する病態として注目されている。我々は、身体活動と血中炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、IL-15、TNF-α)の関連について検討した。日本多施設共同コーホート研究-佐賀地区-の調査参加者12,069名(2005年11月-2007年12月の期間に、旧佐賀市の40歳-69歳の居住者に対してベースライン調査を実施)の中で初期に参加した2,165名(男性916名、女性1,249名)の血清サイトカイン濃度を測定し、その中から加速度計法による身体活動データが得られなかった者を除外した2,123名(男性893名、女性1230名)を解析対象とした。身体活動は加速度計付歩数計(Lifecorder-EX)を用いて評価し、歩数、PALに加えて、身体活動強度別にも定量した(3メッツ未満の低強度、3-6メッツの中強度、6メッツ超の高強度)。血清サイトカイン(IL-6、IL-8、IL-15、TNF-α)はELISA法で測定した。解析は、歩数やPhysical Activity Level(PAL)、強度別身体活動量などの身体活動の指標(四分位)とサイトカイン濃度(対数変換値)について、性、年齢、飲酒、喫煙、エネルギー摂取量、BMIで調整し、共分散分析と重回帰分析を行った。 歩数の増加に伴いIL-6、IL-15、TNF-αの有意な低下が認められた(P<0.05)。一方、歩数とIL-8の間に関連はみられなかった。PALについては、歩数と同様の結果であった。身体活動強度別に解析した結果、中強度身体活動量とTNF-αの間に負の関連が認められた(P=0.008)。加えて、高強度身体活動は単独ではいずれのサイトカインとも有意な関連は認められなかった。本研究の結果から、身体活動(歩数、PAL)と血中IL-6、IL-15、TNF-αレベルの間に負の関連があることが分かった。さらに、3-6メッツの中強度身体活動の増大が肥満と独立してTNF-αの低下に寄与する可能性が示唆された。
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