本研究では生体のストレス応答を末梢の糖・脂質エネルギー代謝とミトコンドリア機能に焦点を当てて解析し、ストレスにより誘起される病態の分子メカニズムを解明することを目的としている。 平成21年および22年度の研究成果より (1)生体へのストレス負荷は糖・脂質エネルギー代謝を著明に変動させると同時に、肝臓のミトコンドリア機能を障害して脂肪肝を誘発すること (2)この様なストレスによるミトコンドリアの機能変化が、マウスの自発行動量を低下させたり、免疫機能の破綻を引き起こすこと (3)マクロファージのミトコンドリア密度やミトコンドリア呼吸活性はLPS刺激によるサイトカインの分泌能を決定する重要な因子であることを明らかにした。 マウスを用いた解析の結果、ストレスによるグルココルチコイドの分泌上昇がミトコンドリア機能の障害に関与していることが示唆された。グルココルチコイドはストレスにより上昇し免疫、炎症、癌、精神疾患などの病態に関与することは臨床においてもよく知られているが、ストレスがミトコンドリア機能を介して様々な疾患を誘起するメカニズムの詳細は未だ明らかではない。現在、(1)ストレスによるグルココルチコイド分泌の上昇が、マクロファージのミトコンドリアの機能を変化させてサイトカイン分泌を制御するメカニズムの解明、および(2)ミトコンドリアの正常な機能制御の維持による病態回避の可能性を検討中である。生体へのストレス負荷におけるミトコンドリア機能への影響を明らかにすることにより、様々なストレス関連疾患の病態解明及び治療戦略への確立が期待できる。
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