研究課題
本研究では、生体のストレス応答を末梢の糖・脂質エネルギー代謝とミトコンドリア機能に焦点を当てて解析し、ストレスにより誘起される病態の分子メカニズムを解明することを目的としている。平成21~23年度の研究成果より、1、生体へのストレス負荷はミトコンドリアの代謝動態を著明に変化させ、脂肪肝や肝機能障害を誘発すること。2、ストレスによるミトコンドリアの機能変化が、マウスの自発行動量を低下させたり、免疫応答の破綻を引き起こすこと。3、ストレスにより分泌されるグルココルチコイドがミトコンドリアの機能を制御する重要な因子になりうること。4、免疫担当細胞のミトコンドリアの働きが自然免疫応答を決定する重要な因子であること。等を明らかにした。我々の研究成果から得られた知見は、生体へのストレス負荷がミトコンドリア機能を介して様々な疾患を誘起する可能性を示唆するものである。更に我々は、ミトコンドリアでのエネルギー産生において重要な因子のひとつであるカルニチンが、マウスにおいてストレス病態を改善するという結果を得た。これまでに、このような視点からストレス病態の背景を明らかにした研究は殆どない。これらの研究結果は、ストレスにより引き起こされる様々な疾患の病態機構の解明のための分子基盤となりうる。ストレス病態の背景を分子生物学的に明らかにする研究は、ストレス病態の治療およびストレスの少ない健康的な社会作りに貢献するために非常に重要であると思われる。
すべて 2011
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FEBS Letter
巻: 585 ページ: 2263-2268
DOI:10.1016/j.febslet.2011.05.049