研究概要 |
習慣的な身体活動の実施は,心筋梗塞や脳卒中といった疾患の独立した危険因子である動脈硬化の進行を抑制するが,その効果には大きな個人差が存在する。このような個人差には,遺伝的要因が深く関与していることが予測される。この遺伝的要因の一つとして,申請者らは,閉経後女性において,エストロゲン受容体α遺伝子多型の違いにより動脈硬化指数および身体活動量増加に伴う動脈硬化指数の改善度が明らかに異なることを報告している。しかし,閉経後女性における検討は行われていなかった。本研究では,閉経前女性を対象者として,エストロゲン受容体遺伝子多型が動脈硬化指数および身体活動による動脈硬化抑制効果の個人差に及ぼす影響について横断的に検討することを目的とした。現段階において,20-50歳代の女性(400名程度)を対象として,動脈硬化指数を含む生理学的データの集積・DNA抽出・一部の多型判定を行い,エストロゲン受容体α遺伝子多型(-401T/C)と動脈硬化指数(上腕足首間脈波伝播速度:baPWV)との関連について解析した。その結果,若齢および中齢の閉経前女性においては,先行研究で得られたような-401T/C多型の動脈硬化指数への影響は認められなかった。これらの結果は,閉経前後でエストロゲン受容体遺伝子多型(-401T/C)の動脈硬化指数への影響が異なることを示している。平成22年度には,新たにエストロゲン受容体β遺伝子多型の解析を加え,身体活動量の増加と動脈硬化指数の改善の関係にエストロゲン受容体関連遺伝子多型がどのように関与しているのかについて検討を進める予定である。
|