研究概要 |
加齢に伴う動脈硬化の進展や,習慣的身体活動の抗動脈硬化作用には大きな個人差が存在する。我々はこれまでに,閉経後女性において,エストロゲン受容体(ER)α遺伝子多型が動脈硬化指数およびその運動効果の個人差に明らかに影響することを報告している。本研究課題では,対象者を閉経前女性(20-50歳代の女性;390名)に拡大し,さらにERβの解析を含めた同様の検討を行った。平成21年度には,ERα遺伝子多型の動脈硬化指数およびその運動効果の個人差に及ぼす影響について検討した。また,それぞれの遺伝子多型のgenotypeごとに最大酸素摂取量の中央値によって有酸素性作業能力によるグループ分けを行い,グループ間の動脈硬化指数を比較することによって,動脈硬化指数への運動効果に及ぼす遺伝子多型の影響を明らかにしようとした。ERα遺伝子多型(既知の1つ)と動脈硬化指数との関連性は認められなかったが,運動による動脈硬化改善効果はこの遺伝子多型により異なっていた。この結果は,閉経後女性において認められた結果と同様であった。平成22年度には,これまでに動脈硬化指数との関連がほとんど検討されていないERβ遺伝子多型(既知の5つ)と動脈硬化指数およびその運動効果の個人差との関連について検討した。その結果,5つの遺伝子多型のうち1つは閉経前女性の動脈硬化指数に明らかな影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに,3つの遺伝子多型は運動による動脈硬化抑制効果に明らかに影響していた。 これらの成果は,閉経前女性において,エストロゲン受容体に関連する遺伝子多型は運動による動脈硬化改善の個人差に関与していることを示唆するものである。
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