研究課題
本研究では「加齢に伴う脳血流量および脳血流配分比の経年的変化」を3カ年にわたり検討してきた。今年度は、研究の最終年度であり以下の知見が明らかになった。1)加齢に伴う脳血流の低下は、高齢期においても継続的に進行するのか否かという疑問があった。我々の研究成果によれば、総頸動脈血流量を脳血流量の指標として考えた場合、60歳以上の高齢期(女性)においても、年齢に伴い脳血流量は継続的に低下していくことが明らかになった。2)140名の60歳以上の高齢者を、WHOの基準をもとに正常血圧群と高血圧群に分けて、総頸動脈血流量を比較すると、高血圧群が有意に高いという結果を得た。この結果は、高血圧群の脳血流が正常血圧群に比べて低下しているとする、これまでの概念とは異なるものであった。3)60歳以上の高齢者における体力レベルと総頸動脈血流量の関係性を検討すると、有意な正の相関関係が認められている。この体力レベルは、我が国で現在行われている文科省指定の体力テスト6種目の成績を得点化し合計したものであり、筋力、バランス能力、柔軟性、歩行能力、持久力の観点から総合的な高齢者の体力を示している。この相関関係は年齢を調整変数として、加齢の影響を除いても有意であった。つまり、加齢による脳血流の低下は不可逆的なものではなく、運動の継続や体力維持によってその低下を抑制できる可能性を示すものである。以上の知見は、加齢に伴う脳血流の変化、血圧などの循環指標の影響、体力との関係性を示唆するものであった。また、加齢性の脳血流低下の抑制に運動トレーニングが有効である可能性を示唆するものでと同時に、高血圧症の発症は、脳の自己調節機能に対しても何らかの影響を与えることが考えられた。
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Journal of Physiology
巻: (受理・掲載号未定)
巻: 589 ページ: 2847-2856
Clin Physiol Funct Imaging
巻: 31 ページ: 445-451
10.1111/j.1475-097X.2011.01040.x
http://www.jwcpe.ac.jp/research/