研究課題
血管は加齢とともに硬化していき、それは誰も避けて通ることができない。この加齢による動脈硬化は、心疾患や脳卒中といった死に繋がる生活習慣病の危険因子である。体力、特に全身持久力と動脈硬化との関連は数多くの知見があるが、体力の構成要素の一つである柔軟性と動脈硬化との関係を示した報告は皆無であった。我々は今年度、中高齢者において、体の硬い人は血管も硬いことを明らかにした(Yamamoto et.al. AJP 2009)。この結果は、柔軟性は動脈硬化と関連する体力の一つであることを示唆している。本研究は、この柔軟性と動脈硬化との関係には交感神経系が関与しているという仮説を検証することである。この目的を遂行するために、今年度は柔軟性と交感神経活動との関係を横断的に検討した。28名の成人男女(51-77歳)を対象に、柔軟性(長座位体前屈)、交感神経活動(血漿ノルエピネフリン)、動脈硬化度(cfPIW)を測定した。柔軟性と動脈硬化度との間には負の相関関係が観察された(P<0.01)。しかしながら、柔軟性と交感神経活動との間には有意な相関関係は観察されなかった。一方で、交感神経活動と動脈硬化度との間にも、有意な関係は見られなかった。今回の実験からでは、本研究の仮説をサポートする結果は得られなかった。交感神経活動の指標として用いた血漿ノルエピネフリンは、個人間のばらつきが大きいことが知られているが、このことが今回の結果に影響を及ぼしたのかもしれない。今後は、現在進行しているストレッチ介入研究によって、柔軟性、交感神経活動および動脈硬化との関係を縦断的に検討していく予定である。
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