研究課題
我々は昨年度、中高齢者において、体の硬い人は血管も硬いことを明らかにした(Yamamoto et.al.AJP2009)。この結果は、柔軟性は動脈硬化と関連する体力の一つであることを示唆している。今年度は、柔軟性を向上させると動脈硬化度が改善されるのかという疑問を明らかにするために、ストレッチング運動介入が動脈硬化度に及ぼす影響について検討した。被験者は、長座位体前屈が40cm未満で40歳以上の中高年者43名とし、ストレッチング介入群(n=20)と対照群(n=23)の2群に分けられた。ストレッチング介入群には、1回40分程度の静的ストレッチング指導が2ヶ月に1度、合計3回実施された。さらに、介入群の被験者は各自で1回15分間の静的ストレッチングを1日2回できる限り毎日実施した。ストレッチングの項目は、座位あるいは臥位で行う大腿部や殿部のストレッチングを主とし、上肢から下肢にわたる全身の静的なストレッチングで構成された。ストレッチング介入前後における変化を2群間で比較すると、柔軟性(長座位体前屈)および動脈硬化度(cfPWV)において有意な交互作用が認められ、対照群と比較して、ストレッチング介入後の柔軟性は増加、動脈硬化度は低下した(P<0.05)。一方で、食事摂取や身体活動量に関しては、交互作用は認められなかった。これらのことから、ストレッチング介入によって加齢に伴う柔軟性の低下が抑制されると、動脈硬化度の増大を抑制できる可能性が示唆された。本研究は生活習慣病予防に関するストレッチングの新しい側面を提示した。
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