研究概要 |
加齢に伴う動脈の硬化や弾性の減少は、心肺体力を高く維持することで減弱することが出来ると考えられている。これは、高い体力レベルを保持することが、加齢に伴って増加する循環器疾患リスクを軽減することにつながることを示唆している。しかしながら、動脈の物理的特性の1つである粘性が加齢や体力の影響を受けるかどうかは明らかにされていない。本研究では、横断的手法を用いて、加齢、心肺体力および動脈粘性の関係を明らかにすることを目的とした。若年男性39名(25~39歳)と中年男性46名(40~64歳)は、各年代の最高酸素摂取量の平均値に基づいて、高体力群と低体力群に分けられた。トノメトリー法と超音波方を用いて、総頸動脈の血圧波形と血管径波形を導き出した。2つの波形によるヒステリシスループから、動的コンプライアンス、静的コンプライアンス(弾性)および動脈粘性を算出した。低体力群において、若年者と比較して、中年者の動的および静的コンプライアンスは低く、動脈粘性は高かったが(それぞれ、0.10vs0.13mm2/mmHg,10.1vs12.610-6m/mmHg,and 2235 vs 1411mmHg・s/mm;全てP<0.05)、高体力群では若年者と中値者の間に有意な差は認められなかった。中年者において、低体力群の動脈粘性は、高体力群と比較して有意に高かったが(1411 vs 1725mmHg・s/mm;P<0.05)、若年者では両体力群の動脈粘性に有意な差は認められなかった。これらの結果は、中心動脈の粘性が加齢によって増加し、その増加は心肺体力の高い者において抑制されることを示している。これらの成果を確認するために、平成22年度は有酸素性トレーニングを用いた介入実験を計画している。
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