研究概要 |
転写因子ChREBPの活性化機構には、従来よりリン酸化・脱リン酸化が関与していると考えられてきたが我々はさらに14-3-3タンパクの結合が、核内への移行に関与することを突き止め世界に先駆け報告した(sakiyama et al.J,Biol.Chem.283, 24899-24908, 2008)。 近年、翻訳後修飾がその他多くの転写因子の制御に関わるという報告がなされるようになり、ChREBPも修飾されている可能性が十分あると考えられた。そこで本研究課題では、翻訳後修飾の一つであるO-GlcNAcに着目し、新規活性化機構の解明を行うことを目的とした。 その結果、予想通りChREBPはO-GlcNAcの修飾を受けていることをO-GlcNAc特異抗体を用いた免疫沈降およびウエスタンブロットの手法により確認した。さらに、O-GlcNAcの修飾を受けることで転写活性が上がることが判明した。O-GlcNAc転移酵素の阻害剤を用いた実験により、転写活性が下がることからも本修飾を受けることで、転写の活性化が起こるようである。 しかしながら本修飾による制御は、従来報告したリン酸化・脱リン酸化の制御の支配下にあり、本転写因子タンパク質の安定化に関係があるようである。なお本成果は、Biochem.Biophys.Res.Commun.402,784-789.2010において報告された。 肥満予防の為の代謝阻害研究は多数あるが、ChREBPは転写因子としてはそれほど強い活性を示さない為、完全な阻害ではなくとも活性化型の量的制御のみで十分効果が期待できる利点がある。よっていち早く肥満要因の一つである本転写因子に目を付け、研究することは大いに社会貢献するものであり意義がある。
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