研究概要 |
現在、3年間の計画のうち2年が経過したが、昨年度miR-141/-200aがDlx5を標的としていることを明らかにし、J.Biol.Chem.への報告(284(29),19272-19279(2009))、特許申請を行った。本年度も引き続き、アレイ解析で変動したmicroRNAの標的遺伝子について検討をを行った。 その結果、BMP-2刺激することで変動した9種類のmicroRNAうちの一つであるmiR-208が骨分化に関与する転写因子Ets1を標的遺伝子としていることを明らかにした。以下、結果について示す。BMP-2刺激後、miR-208は分化に伴い発現を低下させた。そこで、miR-208のPrecursorを遺伝子にリポフェクション法により導入し、分化指標であるアルカリフォスファターゼ(以下ALPと省略)活性を検討したところ、有意にALPの活性が低下した。この結果、miR-208の発現低下が分化に関与していることがアレイ解析の結果を含め明らかとなったことから、Sangar miRbaseおよびTargetScan5.1などのバイオインフォマティックス解析を行った。解析の結果、標的遺伝子として、V-ets Erythroblastosis Virus E26 Oncogene Homolog 1(Ets1)が候補とあがった。その後、miR-208を導入した細胞では、Ets1のmRNA発現は変化しないが、タンパク発現は低下することが解り、mRNAの分解を伴わないタンパク発現制御がmiR-208によって行われていることが明らかとなった。また、標的遺伝子であるEts1の非翻訳領域にあるmiR-208の結合領域を組み込んだセンサーベクターを用いたルシフェラーゼアッセイの結果から、発光レベルが有意に低下したことから、miR-208がEts1を標的遺伝子としていることを同定した。本研究結果については、J.Biol.Chem.へ報告(285(36),27745-27752(2010))した。 現在、さらにmiR-370,294,328がバイオインフォマティックス解析を行い、標的遺伝子候補をあげている。今後、これらについても標的遺伝子を明らかにし、miRNAによる骨芽細胞分化制御機構をさらに明らかにしていく予定である。
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