研究概要 |
前年度までの2年間でmiR-141/-200aがDlx5を、miR-208がEts1をそれぞれ標的遺伝子としていることを明らかにし、J.Biol.Chem.への報告(284(29),19272-19279(2009), 285(36), 27745-27752(2010))、特許出願を行った。本年度は、3年間の研究計画のうちの最終年にあたり、引き続きmiRNAアレイ解析で変動したmicroRNAの標的遺伝子の同定作業とともに今後の発展性、解明事項の確認を行なった。 その結果、BMP-2刺激することで変動した9種類のmicroRNAうちの一つであるmiR-370が強力な骨分化誘導因子であるBMP-2と骨分化に関与する転写因子Ets1のそれぞれを標的遺伝子としていることを明らかにした。 以下、結果について示す。miR-370はBMP-2刺激24時間後まで発現が低下し、72時間後にはBMP-2刺激前の発現量に戻った。本現象から、標的とする遺伝子は、骨分化早期に関わる遺伝子であることが推測された。また、miR-370のPrecursorをリポフェクション法により導入し、骨分化指標であるアルカリフォスファターゼ(以下ALPと省略)活性を検討したところ、有意にALPの活性が低下した。以上の結果から、miR-370の発現低下が骨分化に関与していることが示唆された。そこで次に、miR-370の標的遺伝子を明らかにするため、Sangar miRbaseおよびTargetScan5.1を用いたin silico解析を行った。解析の結果、標的遺伝子として、BMP-2とEts1が候補とあがった。miR-208を導入した細胞では、BMP-2およびEts1のmRNA発現は変化しないが、タンパク発現は低下することが解り、mRNAの分解を伴わないタンパク発現制御がmiR-370によって行われていることが明らかとなった。さらに、標的遺伝子であるBMP-2およびEts1の非翻訳領域に存在するmiR-370の結合領域を組み込んだセンサーベクターを用いたルシフェラーゼアッセイを行なった結果、発光レベルが有意に低下したことから、BMP-2およびEts1がmiR-370の標的遺伝子としていることを同定した。本研究結果については、FEBS Letters.へ現在投稿中である。 現在、さらにmiR-30b,294,328の標的遺伝子の候補を絞り、同定と標的分子による骨分化制御メカニズムについて検討中である。
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