明治期から昭和40年代にかけて栄えた仙台地方の染色品のうち、大正期以降、大量染色を可能とした「注染」で使われた浴衣・手拭いの型紙文様を収集し、その文様のデジタル化処理(デジタルデータ化)による収録と電子修復を行うとともに、注染による染色が盛んになる以前に多量に生産された常盤紺型の文様について詳細な調査を行った。 平成21年度は、150枚の型紙について調査と文様の電子保存をおこなった。当年度に調査した型紙は、ほとんどが「名入れ型紙」であった。これは、営業日的など宣伝用に使用・頒布する手拭いや浴衣を染色するために用いられた型紙であるため、ほとんどの型紙文様に文字と定紋、文字と割付文様など、文字とその他の文様を組み合わせた比較的簡素なデザイン構成の型紙が多数を占めた。型紙の状態は、大きな破損個所を持つ型紙は少なく、概ね良好な状態のものが多かった。しかし約20枚の型紙文様については、汎用画像処理ソフトを用いて文様の修復を行った。一方で、今回詳細な調査と電子保存を見送った26枚の型紙は破損の程度が大きく、損壊しているものも見られた。これら重度破損型紙の物理的修復方法について早急に検討し、その上で、文様の電子保存と電子修復を試みることとする。 また、仙台市内の染工場が所蔵し、昭和20~30年頃に用いられていた手拭いなどの型染商品目録2冊と手描きの貴重なデザインカード95枚を発見し、電子保存を行うことができた。これに、昭和30年頃~平成10年頃に製作されたと考えられる注染手拭い288枚の画像を加えてデータベース『仙台型紙資料集IV』(147頁、資料掲載数667枚)を作成した。
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