明治期から昭和40年代にかけて栄えた仙台地方の染色業に関する資料のうち、大正期以降に生産された浴衣・手拭い染色に使われた注染用型紙と、注染が行われる以前に生産されていた常盤紺形染を対象とし、型紙の調査と文様の収集、電子的保存、電子的修復、そしてそれら文様の活用について検討する事を目的とした。 平成23年度は、名取屋染工場(仙台市青葉区)が所蔵する型紙のうち、文様の電子化を終了していた第三型入れ箱の注染型紙275枚について、破損文様の電子的修復と、新たに第四型入れ箱の型紙164枚の状態調査、型紙文様の電子化を試みた。一方、常盤紺形染の調査では、新たに2枚の型紙と染見本2柄を収集することができた(いずれも旧最上染工場由来の資料)。特に、当時の染物については公的機関に保管されている資料以外は殆ど見出されていない現状にあるため、今回収集した染見本は貴重な資料である。 また、仙台市内の染工場が所蔵する注染浴衣型紙(浴衣文様で名入れ部分の見られない型紙文様)345枚と風呂敷型紙3枚を電子保存し、電子的修復を試みた結果をまとめ、データベース『仙台型紙資料集VI』(全85頁、資料掲載数348枚)を作成した。資料集を作成したことで、これまで現状が明らかにされていなかった地域の伝統型染め資料を保存し、その伝統文化・技術を後世に伝えられる。 一方で、これまでに保存してきた地域の型染めに関する電子資料を活用する方法の端緒として、デジタルプリントシステムを活用したテキスタイルデザインを行い、新しい技術と現代の感性を活かした物作りに活用することができた。特に、大学生15名の協力を得て、伝統文様に現代感覚を活かした手拭いのデザインを試みた。取組み後のアンケート結果、概ね好評であったため、大学生のみならず、一般市民に地域の伝統染色の新たな可能性について周知する方法として今後発展させる。
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