幼稚園で見られる仲間同士の模倣は、従来の研究でも見られていたように仲間とのやりとりを助け、仲間集団の形成を促進する大きな役割を果たしている一方で、仲間集団を固定化し、境界を強くすることで他者が入り込みにくい集団を形成する役割を果たしている時期もあることが、昨年度までの分析からみえてきた。そこで本年度の研究においては、年少児のときの大勢で同調的に楽しめた時期から、2者の親密ではあるが他者を排除するような関係を経て、どのように協同的な関係を形成することが可能になるのかについて、子ども同士の模倣が見られる場面の分析と保育者へのインタビューによって検討した。 1.模倣によって固定化された関係の変容 模倣のありようから見えてきた共に遊ぶ仲間が固定化した関係は、内部での「いざこざ」や拒否の経験をきっかけに変容する可能性、また、幼稚園でのさまざまな行事や遊びの変化などと連動してそれぞれの子どもの関心が遊び内容へと変化してくることから変容する可能性が見えてきた。 2.固定化された関係の変容と同時にみられる模倣と他者理解の変化 固定化した関係のときの模倣はお互いが同じであること、あるいは同じ集団であることを確認するかのような模倣が多く見られたが、この関係が変化しはじめ、互いの意図が異なることを理解した上での協同性が見られることと連動して、遊びの内容を主とした深層模倣がみられるように変化していった。 3.模倣が仲間集団の形成に果たしている意味 幼稚園で見られる仲間同士の模倣には、安心して遊びを展開することができる境界を強くすることで他者が入り込みにくい排他的な集団を形成する役割を果たしている時期もある。このような固定化した集団が発達の過渡的現象として見られ、協同的な関係へと変化するプロセスの多様性が示唆されたことは、今後の保育実践における幼児理解に寄与すると考えられる。
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