本研究は、都市において子供が積極的に親しめる水辺環境整備と、その安全性を両立させるために、「水難事故をできるだけ未然に防ぐことができるか、または早く発見するか」という視点を重視し、ユビキタス情報社会に即したシステムを提案、実験的に評価することが目的であった。昨年度の研究において実施された文献及び統計の調査結果から、重大事故に関しては海と河川が多く、想定している都市水辺環境に関する事故の比率が低かった。次に小学2年生と5年生の児童に対して水辺環境と安全意識に関するアンケートを実施した。その結果、児童の事故に関する認識が居住場所や年齢によって変化していた。今年度はまず昨年度に引き続き、アンケートを調査しシステム構築の指針を検討した。事故事例の自由記述では、アンケートに答えた103名中21名が何らかの事故経験を有し、そのうち転落・転倒による溺水もしくは負傷が約47%、水辺環境での岩や貝殻・ごみなどによる負傷が約53%と、公共機関の調査統計に表れない事故が確かめられた。これらの調査結果を元に、都市に限らず親水機能を有する水辺環境における事故防止と早期発見のため転落・転倒検知や水辺環境の状態監視システムを構築することとした。我々は導入が容易と考えられる環境の状態監視システムに着目し、現在実用化が始まっているフィールドサーバと呼ばれる屋外センサネットワークの構築手法を適用した。水辺環境の監視対象としては気温や水質だけでなく、ごみの投棄状況や児童の人数把握などが挙げられる。この監視対象うち物理量の観測がプロトタイフに最適と判断し、昨年度から富山で実施している沿岸環境観測のフィールドサーバ化を試みた。マイコンと無線機を主としたノードを試作し、4基のノードでメッシュネットワークを構成、センサ情報の取得に成功した。
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