介護において、業務の区切りは、必ずしも「時間(タイム)」ではなく、「作業(ワーク)」によるものも多い。パートタイマーと言えども、利用者から求められる介助内容は、正規雇用者(正職員)と変わりはない。しかし、介護業界における人手不足は切実であり、所定の人数合わせのために「腰痛のため移乗介助はできない」「作業の途中でも時間どおりに帰りたい」といった要求が強いパートタイマーを雇用せざるを得ない施設も多く、結果的に、パートタイマーの業務を正職員が補うような構造が多々みられ、正職員の負担感が増す傾向が見られる。反面、パートタイマーには、技能向上、研修への参加といったスキルアップの機会や、自身を守る安全衛生情報などが与えられないなど、介護職として働く要件が整っていないという問題も見える。本研究の目的および課題は、現場調査データをもとに、パートタイマーを「タイム・パートタイマー」から「ワーク・パートタイマー」として活用するために、必要な条件・環境を明らかにすることある。パートタイマーを有効的に活用し、管理者や正職員との連携の在り方を見直すことによって、それぞれの負担軽減とディーセント・ワーク性を高めることが期待される。 本年度の研究では、1年前に開設した介護施設(首都圏)において、管理者、正規雇用者、非正規雇用者へのヒアリング調査、質問紙調査の結果を軸に、三者の意見の相違に着目した。たとえば、管理者からは、一部の非正規雇用者の正規化を望む声がある反面、当該の正規雇用者は、責任の所在やシフトの問題から、非正規雇用のままでいることを好み、それでこそ自分の持ち味が活かせるとの主張があった。その他の関係においても、いくつかの意見の相違がみられた。本年度の成果としては、これらの意見の整理を行い、相互理解のため方策として、現場参加型の意見交換の場を持つこと、およびその方法について、提案を行った。
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