市販幼児ズボン97点を収集し、ウェスト長を測定して実験用ボディのウエスト49cmに対する締め付け率を算出した。さらに、実験用ボディと接触圧測定器AMI3037((株)エイエムアイ・テクノ)を用いて、幼児ズボン及び市販ゴム紐のみのウエスト前中心部の衣服圧[kPa]を測定した。 その結果、市販幼児ズボンの衣服圧は、90サイズズボンで平均2.88kPaであったが、締め付け率のみでは衣服圧との相関がみられなかったことから、使用されているゴム紐及びウェスト部の布の引張特性が衣服圧に影響を与えていることが確認された。市販ゴム紐の伸長力は45%という低伸張時ではゴム紐幅にかかわらず、中の糸ゴム総面積が影響していることが明らかとなった。そこで、市販ゴム紐の締め付け率と同一の伸長ひずみにおける単位幅あたりの伸長力と衣服圧との関係をみると、正の相関関係が認められ、伸長力より衣服圧が予測できることがわかった。 次にウェスト部の布の影響をみるため、実験用ズボンを試作し測定を行った結果、同一のゴム紐を使用しても、ウエストに伸縮性の高いスパンリブを使用したズボンは普通のフライス生地に比べて衣服圧は約2倍程度高く、ウエスト部の布の引張特性が衣服圧に影響を及ぼしていることがわかった。 これらの実験結果を基に幼児被験者若干名により測定を行った結果、ボディでの衣服圧はゴムの種類や締め付け率によって衣服圧に顕著な差があるが、人体の衣服圧はボディに比べるとその差が小さく、全体として低めになる傾向が確認された。又、人体は呼吸、運動時等にウェストサイズが大きく変化する為、特にウェストにくびれのない乳幼児ではズボンが容易にずり下がる等、乳幼児特有の課題が抽出された。更に2kPaと言う衣服圧は先行研究などでは成人においても高い衣服圧とされているが、着用時のきつさ、ゆるさが乳幼児は表現できず、血流などの身体反応の測定による客観的評価無しには判断できない事が明らかになった。
|