平成24年度は「多面体を用いた縫合後の立体形状予測法の3次元縫合線が一般的な捩れ角度をもつ場合への応用」について研究を行った.具体的には①襟付け線を例題に,立襟と折襟を得るための変数設定とそのときの面の表裏の関係を明らかにすること,②袖付け線を例題に,①で得た結果を応用することの2点について取りくんだ.そして①について主な成果を得た. この予測法においてユーザーが設定する変数は,型紙の扇の半径,型紙の縫合線の曲率の正負と進行方向,頸のモデルである円筒の半径,襟付け線の進行方向,縫合後の立体形状の面の立ち上がり角度の正負と母線ベクトルの方向(正負)である.この中で,縫合後の立体形状が立襟か折襟かを決定づけるのは,襟付け線の進行方向,縫合後の立体形状の母線ベクトルの方向,型紙の縫合線の曲率の正負と縫合後の立体形状の面の立ち上がり角度の正負が一致しているか否か,の3条件であった.立襟と折襟を生成するための3条件の設定方法はそれぞれ2通りずつであった.襟は2枚仕立てであり,立襟でも折襟でも縫合後の立体形状において外側に現れる面が表襟である.実際の襟の縫製に倣い,型紙の縫合線の進行方向が襟付け線の進行方向と一致している場合を表襟,一致していない場合を裏襟とした.表襟と裏襟では,型紙の縫合線の進行方向が異なるにもかかわらず,立襟あるいは折襟を生成するための3条件の設定方法は,どちらも同じであった. 実際に襟の型紙を作成する際,縫合後にフロントネックポイントをつき合わせた状態で襟幅を等しく見せるために,左右の襟幅は微妙に変えられている.縫合後の立体形状における面の表裏を考慮してシミュレーションを行えるようにするための本研究の成果は,高品質な衣服生産に貢献できると考えている.
|