ワインの味は有機酸やアミノ酸などの成分だけでなく、苦味の主体であるフェノール性化合物は組成や量・収穫時期によりワインの品質を大きく左右し、ブドウの品質を的確に捉えるには代謝物全体を包括的に解析する必要がある。本課題はブドウの特性を最大限に反映した高品質のワインを製造するプロセスとして、メタボロミクス解析により、時期別でブドウの代謝物を網羅的に測定し、プロファイリングを行った。 4種類のブドウ(甲州、シャルドネ、リースリング、セミヨン)の果実を開花直後から成熟まで定期的に採取し、種を取り除いた果肉と果皮は1%HCl-70%MeOH水溶液で抽出を行い、超高速液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計(UPLC-DAD/TOFMS)に供した。その結果、4種類のブドウのブドウでtrans-caftaric acidが最も多く、ベレーゾンまでtrans-caftaric acidが蓄積されたが、ベレーゾン以後についてはtrans-caftaric acidは蓄積されず、逆に減少した。さらに、開花70日前後から再び、trans-caftaric acidが蓄積される傾向が見られ、同時期にそれまでにほとんど存在しなかった遊離型のtrans-caffeic acidやtrans-p-coumaric acidの濃度も上昇し続ける傾向が認められた。品種別において、甲州は他の品種に比べ、trans-caftaric acid、trans-coutaric acidともに多いことが示唆された。 以上の結果より、フェノール性化合物はブドウ収穫時期により大きく挙動し、ワインの品質に影響を与える原因の1つであると考えた。
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