研究概要 |
ワインは多くのフェノール性化合物を含んでおり、色調、呈味などに影響を与える。赤ワインは熟成すると色が紫色から赤、そしてレンガ色になり、味もスムースでマイルドになる。しかしながら、熟成中での安定な色素体の量や生成過程については不明なところが多い。 そこで、瓶内での熟成による赤ワインの成分の変動を観測するため、山梨大学ワイン科学研究センターで製造したカベルネ・ソーヴィニヨンとマスカット・ベリーAのワインを試験試料とした。それぞれのワインを製造直後とその1年後に分光光学的パラメータ及び超高速液体クロマトグラフィー-飛行時間型質量分析装置(UPLC-TOFMS)で測定を行った。UPLCで高速分離し、TOFMSから高速フルスキャンで精密質量とフラグメントイオンが一斉に取得できるため、40分で赤ワイン中の10,000以上の化合物の組成式や化学構造の推定が可能となった。この膨大なデータから成分間の差異を見いだすため、検出ピークの精密質量と保持時間、並びに強度データをリスト化し、これを元にPCA(主成分分析)でスコアプロットした。この結果から、熟成前の状態のワインと1年間熟成したワインのグループに分けることができた。さらに、この2つのグループの分離に寄与している化合物を特定するために、OPLS-DA(直交最小二乗法判別分析)による視覚化を行った。解析結果から赤ワインの熟成に重要な成分の一部はピラノアントシアニンやプロアントシアニジンであることが分かった。
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