にがり成分を含んだ塩は、旧専売塩と比較して、直に口に含んだ場合や振り塩などで料理に用いた際に、塩味をまろやかに感じさせ美味しいと言われている。にがり成分を含んだ塩は、粒径が大きく、水分含量も高いため、付着性や溶解速度が旧専売塩とは異なり、食品内部への塩の浸透挙動が変化する。それが、最終的に食品の味となって現れているのではないかと考えられるが、食品表面上での溶解速度を調べる方法がないため、明らかではなかった。そこで、本研究では、食品調理における塩の溶解速度、浸透度合測定のための新規評価法の確立並びに塩の溶解モデルを構築し、最終的に塩の粒径が食品の調理特性に及ぼす影響について明らかにすることを目的に研究を行った。21年度は寒天ゲルや豆腐ゲルなどの単一成分を使用したモデル食品を作製し、塩が持つ電解質の特性を利用し、ゲル表面上で塩が溶解した際に変化する電気伝導度を、LCRメーター装置を用いて継時的にリアルタイムで測定し、モデル食品表面上での溶解速度を求める新規評価法を確立した。22年度は、21年度に開発した新規評価法を用い、モデル食品中での塩の浸透度合を調べる方法の確立を目指すと共に、モデル食品のデータを基盤として実際に食品に振りかけた場合を想定したモデル実験を実施した。その結果、モデル食品における塩の浸透度合も本システムにおいて測定可能であること、塩の浸透度合は塩の粒径と相関があり、粒径が小さい塩の方が粒径の大きい塩よりも速く内部に浸透することが確認できた。また、大根やジャガイモを対象として実験を行った際にも同様の結果が得られ、実際に食品においても本評価法が応用可能であること、食品中における塩の浸透速度にも塩の結晶粒径が影響することを証明した。
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