研究概要 |
本研究は,従来は全く利用価値のない農産廃棄物であるトマト葉を有効利用し,新規食品素材の開発を目的とするものである.有効成分の1つとして,トマト果実にも含まれているγ-アミノ酪酸(以下GABA)に注目し,(1)トマト葉のGABA含有量の季節変動の追跡,(2)トマト葉の摘採前のGABA含有量および摘採後のトマト葉処理中のGABA含有量の経時変化の測定,(3)実験動物にトマト葉を与えた場合の血圧の測定および血中GABA含有量の経時変化について,近赤外分光法により非破壊および非浸襲測定を行う.近赤外分光法により多種類のサンプルのGABA含有量を短時間でモニタリングすることが可能になれば,多面的に分析・検討でき,トマト葉を有効利用した新規食品素材の開発につながるものと期待される.平成21年度は,千葉県市川市内の圃場で加工用トマトの栽培を行い,GABAの抽出方法の検討および非破壊測定を行った.その結果,トマト葉のGABAがもっとも高い時期は8月であることが確認された.トマト葉の採取後,生葉の周辺空気を窒素置換したところ,6時間経過後にはGABAが約1.7倍となった.摘採後のトマト葉を温風乾燥(60℃)し,抽出温度(20~100℃)を変えて調製したトマト葉抽出液を測定した結果,抽出温度によるGABA含有量の差は約1.1倍程度であった.以上のことから,トマト葉は8月に摘採を行い,生葉の状態で周辺空気を窒素置換し,60℃で温風乾燥した後に抽出すれば,効率よくGABAを抽出できることがわかった.さらに,近赤外分光法によりトマト葉抽出液のGABA含有量の非破壊測定を行った.その結果,測定によって得られたGABA含有量と相関が高かった1662nmの2次微分値を用いて,GABA含有量を単回帰式で示すことができた.
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