研究概要 |
本研究は,農産廃棄物であるトマト葉を有効利用し,新規食品素材の開発を目的とするものである.有効成分として,トマト果実にも含まれているγ-アミノ酪酸(以下GABA)に注目し,(1)トマト葉のGABA含有量の季節変動の追跡,(2)トマト葉の摘採前のGABA含有量および摘採後のトマト葉処理中のGABA含有量の経時変化の測定,(3)実験動物にトマト葉を与えた場合の血圧の測定および血中GABA含有量の経時変化について,近赤外分光法により非破壊および非浸襲測定を行う.近赤外分光法により多種類のサンプルのGABA含有量の短時間モニタリングが可能になれば,多面的に分析・検討でき,トマト葉を有効利用した新規食品素材の開発につながるものと期待される.平成22年度は,トマト葉のGABAの効果を確認するために,高血圧自然発症ラット(以下SHRラット)および正常血圧ラット(以下WKYラット)に対する血圧降下作用について検討を行った.トマト葉の乾燥粉末を熱水抽出(2g/100ml)し,3分間静置後,吸引ろ過して得られたトマト葉抽出液をラットに投与した。なお,対照には蒸留水を用いた.SHRラットに対する単回投与試験では,トマト葉抽出液投与群に有意に血圧の低下が見られた.一方,WKYラットに対する単回投与試験では,トマト葉抽出液投与群と蒸留水投与群の血圧には差が見られなかった.このことから,トマト葉の血圧降下は有効であることが示され,正常血圧には作用しないことが確認された.しかしながら,トマト葉にはトマチンというアルカロイドが含まれており,トマチンをうまく取り除いて,トマト葉から高濃度のGABAを抽出することが可能になれば,新規食品素材としての有効性が広がるものと示唆された.
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