| 研究概要 |
本研究は,申請者がこれまでに行ってきた研究をもとに,食品成分であるチオヒダントインの生理活性と化学構造との関連を明らかにし,チオヒダントインの持つ機能性を食品の調理や加工に応用するための基礎的データを得ることを目的としている。前年度に引き続き,食品中に見いだされるイソチオシアナート(アリルイソチオシアナート,3-ブテニルイソチオシアナート,4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアナート)と各種アミノ酸から調製したチオヒダントイン(ATH-a.a,3BTH-a.a,MTBTH-a.a)を用いて,抗変異原性,血圧降下作用,血中トリグリセライドの上昇抑制作用,抗酸化作用の面から検討を行っている。現在までに確認されたことは以下の通りである。
1) これまでの研究で,チオヒダントインの抗変異原性作用機構が変異原の代謝活性化酵素(CYPIA)の阻害であることが明らかになっていることから,この酵素反応に特異的な基質を用いて抗変異原作用機構を検討した。その結果,チオヒダントインはCYPIAの活性を阻害することが確認され,同じアミノ酸由来の3種のチオヒダントインを比較すると,阻害活性はATH-a.a<3BTH-a.a<MTBTH-a.aとなり,イソチオシアナートの側鎖構造に由来する部分の疎水性が酵素阻害活性に影響することが示された。
2) 血圧降下作用を検討するためACE活性阻害試験を行った。前年度に行った吸光度変化を観察する方法では結果の分かりづらいものがあったことから,今回HPLC分析による検討を試みた。現在も引き続き検討を行っているが,ATH-Hisに阻害活性が認められている。
3) リパーゼ活性阻害試験を行った結果,ATH-Thr,MTBTH-Leu,MTBTH-Phe,MTBTH-Trpに強い阻害活性が認められた。活性を比較すると,同じアミノ酸由来の3種のチオヒダントインを比較すると,阻害活性はATH-a.a<3BTH-a.a<MTBTH-a.aとなった。
これらの生理活性と化学構造との関連について,引き続き検討していく予定である。
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