研究概要 |
本研究は,これまでに得た知見をもとに,チオヒダントインの機能性を化学構造の面から明らかにすることに加え,調理・加工への応用をふまえた各種条件下での安定性に関する基礎的データを得ることを目的としている。前年度に引き続き,食品中に見いだされるイソチオシアナート(アリルイソチオシアナート,3-ブテニルイソチオシアナート,4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアナート)と各種アミノ酸から調製したチオヒダントイン(ATH-a.a,3BTH-a.a,MTBTH-a.a)を用いて,以下の結果を得た。 1)チオヒダントインの抗変異原性作用機構が変異原の代謝活性化酵素(CYP1A)の阻害であることが明らかになっていることから,この酵素反応に特異的な基質を用いて検討した。その結果,中性アミノ酸,芳香族アミノ酸に由来するチオヒダントインにCYP1Aの活性阻害が確認された。同じアミノ酸由来の3種のチオヒダントインを比較すると,阻害活性はATH-a.a<3BTH-a.a<MTBTH-a.aとなり,イソチオシアナートの側鎖構造に由来する部分の疎水性が酵素阻害活性に影響することが示された。一方,酸性アミノ酸や塩基性アミノ酸に由来するチオヒダントインは阻害活性を示さなかった。 2)血圧降下作用を検討するためACE活性阻害試験を行った。HPLC分析により検討したところ,ATH-Hisに阻害活性が認められた。これ以外のチオヒダントインには活性が認められなかった。 3)各種pH条件下におけるチオヒダントインの安定性について検討するため,DMSOに溶解したチオヒダントインを各種pHの緩衝液と混合して4℃で静置し,経時的にHPLC分析を行って残存量を調べた(~240時間)。その結果,pH3~5の酸性領域においては240時間後でも90%以上の残存率を示し,pH6~9では時間経過とともに残存率が低下する傾向が見られた。特にGlu由来のチオヒダントインではその傾向が顕著であった。残存率はアミノ酸の側鎖構造に由来する部分によって異なることが示された。イソチオシアナートに由来する部分構造のちがいによる安定性の比較,各種温度条件下での安定性の解明は今後の課題として残された。
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