研究課題
緑茶の重要な品質要因である水色(スイショク、浸出液の色)の発現機構を解明するために、水色の主体をなすフラボノイドと他の茶葉成分とが水溶液中で共存した場合のフラボノイド水溶液の呈する色の変化、またそのメカニズムについて明らかにすることを今年度の目的とした。フラボノイドのモデル化合物としてケルセチン配糖体を用い、その水溶液の呈する色に対する8種類のカテキンの影響を検討した。カテキン類はケルセチン配糖体水溶液の淡色効果を引き起こしたが、この効果はガレート型カテキンの方が非ガレート型カテキンよりも顕著であった。複合体形成に関する定量的解析は、カテキン類がケルセチン配糖体と1:1の複合体を形成し、その結合定数はガレート型カテキンの方が非ガレート型カテキンよりも大きいことを明らかにした。以上の結果は、ケルセチン配糖体水溶液の色変化の度合いは、ケルセチン配糖体に対するカテキンの複合体形成能に依存することを示唆する。本成果では、緑茶の水色について、従来は色素成分の含有量による考察に終始していたのに対し、浸出液中に共存する他の成分との相互作用により水色に関与する色素の呈する色が変化することを初めて明らかにした。品質と含有成分との関係を解明する上で大変有用な知見といえる。また、色素成分/カテキン複合体形成に関しては各カテキンの構造と複合体形成能力について明らかにした。
すべて 2009
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Vol.73
ページ: 2773-2776