研究概要 |
ビタミンC(L-アスコルビン酸)は生体内の有効なフリーラジカルスカベンジャーであり,これまでに疾病予防との関係について多くの臨床研究や学研究が行われている.体内では,ビタミンCがレドックスシステムに関与することで多くの遺伝子発現機構に影響を与える可能性が考えられることから,ビタミンCの必要量を詳細に知る上で,この機構を明らかにすることは極めて重要である・そこで,ヒトと同様に体内でビタミンC合成のできないODSラットを使用し,ビタミンC摂取レベルの違いによって,ビタミンCの体内輸送メカニズムに関連する遺伝子発現にどのような影響をもたらすかを検討した.また,樹立肝癌由来細胞HepG2を用いて,ビタミンCにより変動する遺伝子の転写調節因子の特定を行った。 試験にはODSラット(雄性)を用い,ラットに0,5,100mg/dayのAsAを投与し、組織中AsA濃度のほか、肝臓中の酸化型アスコルビン酸トランスポーター(GLUTs)、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(DHAR)、グルタチオンレダクターゼ(GR)の発現量を測定した。また、その初代肝細胞を用いて、培養液中のビタミンC濃度をそれぞれ5mM,0.05mM,0mMとなるように調整し,37℃,5%CO_2下において48時間培養後,肝臓中のGLUTs,DHAR,GRの遺伝子発現量を測定した.さらに,樹立肝癌由来細胞HepG2を用いて,特定転写因子の免疫沈降アッセイを行った. その結果,遺伝子発現では肝臓中のDHARの発現が無摂取群で増加し,100mg摂取群で減少した。これらの結果から,組織中AsA濃度は経口摂取量に依存し,組織中AsA濃度が低下した際にはDHARを介した酸化型ビタミンCの取り込みと細胞内のAsA還元能を上昇させることで肝細胞内のAsA貯留量を積極的に維持する可能性が示唆された.また,免疫沈降アッセイの結果より,ビタミンCレベルの変化により特定の因子とのインターラクションが認められた.現在,その遺伝子を特定中である.
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