SHRSPにZFのレプチン受容体変異を導入した新しいメタボリックシンドロームモデルラット(SHRSP・Z-Lepr^<fa>/IzmDmcr(SP・ZF))を用い、メタボリックシンドローム病態発症・進展のメカニズムの一端を解明することを目的とした。 SP・ZFはヒトのメタボリックシンドロームと同様に内臓脂肪型高度肥満、重篤な高血圧を呈し、高脂血症、高血糖、さらに尿中にアルブミンとタンパク質の漏出が認められ、組織学的にも腎障害を起こしていることが確認された。24時間尿中NO_2^-+NO_3^-排泄量および8-OHdG排泄量においてSP・ZFで正常血圧ラット(WKY)や非肥満同胞(Lean)より有意に高値を示した。 またUCP2mRNA発現量に関しては、心臓においてSP・ZFで発現亢進が確認され、腎臓ではWKYに比しSP・ZFとLeanにおいて発現亢進が認められた。 以上の結果より、SP・ZFでは体内の活性酸素、遊離脂肪酸が増加しており、これらが心臓におけるUCP2mRNAの発現を亢進させていると考えられる。さらに、心臓におけるUCP2過剰発現はミトコンドリア内の代謝経路の破綻を引き起こし、これまでUCP2の機能の一つとして報告されている活性酸素の産生抑制機能を、SP・ZFでは失っていると示唆された。その結果、UCP2過剰発現に起因するATP不足、O_2消費の増加により心筋の機能低下を招き心血管疾患の発症に関与している可能性が考えられる。また、活性酸素の増加やNO bioavailabilityの低下が、循環器疾患の危険因子である高血圧の進展に関与していると考えられ、活性酸素抑制、つまり抗酸化物質によるメタボリックシンドロームモデル動物における予防研究の可能性が示唆された。
|