本研究の目的は、日常生活で慢性的に暴露される心理・社会的ストレスに起因したストレス性肥満の発症を予見できるプレバイオマーカーを見出すとともに、得られたマーカーを用いてストレス性肥満を未然に防ぐことができる食品由来因子を探索することである。床敷量を通常の1/20に減らした条件下でマウスを単独で長期間飼育したところ、対象群である群飼育群(5匹/ケージ)と比較して、血中プラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI-1)レベルが上昇した。この地点で、顕著な体重増加は見られなかったことから、PAI-1がストレス性肥満を予見できるプレバイオマーカーとなりうる可能性あると考えた。さらに、PAI-1を腹腔内投与した後のマウスの睡眠/覚醒パターンを調べたところ、ストレス負荷により上昇したPAI-1により、睡眠が撹乱される可能性は少ないことが示された。PAI-1に着目した動物試験を展開していく時に考慮すべき点は、PAI-1の発現には顕著な概日リズムがあることである。つまり、通常の動物試験が実施されている明期(睡眠期)だけでなく、暗期(活動期)にも着目して研究を実施していく必要がある。そこで、暗闇下でマウスに極力ストレスが負荷されない実験環境を確立した。
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