研究課題
解糖系の中間体であるメチルグリオキザール(MG)はタンパク質と容易に反応し、その生成物はAdvanced glycation end products(AGEs)として糖尿病合併症のマーカーと考えられている。このマーカーを指標として、食品成分中より合併症発症やがん発症を防御する因子を探索する簡便な評価系の確立を目指した。また、これまでに構築した評価系を利用して種々の食用植物由来活性成分の探索と作用機序の解明を試みた。ただし、培養細胞系における各種検討結果に基づき、全ての実験において炎症に対する予防効果を見極めるために過酸化水素処理よりも前段階での食品成分の投与処理を行った。1)消化管由来培養細胞株(ラット由来腸上皮細胞と胃粘膜細胞)において、がん化した場合に限り様々なストレスに応答して誘導される熱ショックタンパク質27(Hsp27)の特異的なMG修飾が検出された。2)大腸がん患者(述べ6名)の病巣部位におけるHsp27のMGによる特異的な修飾及び正常部位における非修飾が免疫沈降法によって確証された。3)正常胃粘膜細胞株においては過酸化水素処理によりアポトーシスが誘導されたが、がん化胃粘膜細胞株においては誘導されなかった。蛍光プローブを用いて細胞内活性酸素量測定を行った結果、過酸化水素処理後24時間以内にその量は増加し、アポトーシスが誘導された。正常細胞株へMG修飾Hsp27を導入すると、細胞は過酸化水素処理によるアポトーシスへ耐性を示した。その他結果も含め、細胞死制御へのMG修飾Hsp27の酸化ストレス応答とカスパーゼ活性化抑制を介した関与が強く示唆された。4)アポトーシス誘導や活性酸素量、翻訳後修飾等の詳細な解析で得られた結果より、種々の茶粗抽出物由来の成分や抗酸化物質が生体における過剰な酸化ストレス状態を緩和する効果を発揮し、炎症性疾患の防御に寄与するものと期待された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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