研究課題/領域番号 |
21700768
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
友寄 博子 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (10347700)
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キーワード | 糖尿病 / 低栄養 / 機能性食品 |
研究概要 |
現在、生活習慣病が社会的に問題になっている反面、高齢者の低栄養や若年女性のやせも無視できない状態にある。こういった現状から、効率よく栄養素を摂取できる食品素材の開発が望まれている。我々は先の研究でスサビノリ(P.yezoensis)(海苔)由来成分(焼海苔油)が脂質吸収を促進することを報告している。本研究では、海苔由来成分がどのような機構で脂質吸収に影響を及ぼすのかさらに検討を行った。脂質の吸収には、粘性が影響を及ぼすことが知られているが、本研究で脂質吸収を促進した試料は、高い粘性を示すため、その性質は粘性によるものの可能性が考えられる。さらに、海苔は特有のポルフィラン(食物繊維)を豊富に含むため、それによる可能性も考えられる。そこで、脂質吸収促進作用が単純にその流動性によるものかどうか、さらに、ポルフィランによるものかどうかを検討した。 まず、この作用が焼海苔油の流動性によるものかどうかを検討するために、焼海苔油と同程度の粘度に調製したPEGと焼海苔油を用いてその作用を比較した。その結果、PEGはコントロール群に比較して脂質吸収を有意に抑制した。したがって、海苔の脂質吸収に及ぼす影響については、その流動性によるものではない可能性が示された。 次に、海苔からポルフィランを抽出し、焼海苔油と比較したところ、ポルフィラン投与群は焼海苔油投与群に比較して有意に血中トリグリセリド濃度が低い結果となった。しかし、コントロール群と比較して有意差はなかったことから、ポルフィランが本研究で脂質吸収を抑制したとは必ずしも言えないが、脂質吸収促進作用があるとは言えないことが明らかになった。今後は、その他の海苔由来成分を抽出し、その作用を確認するとともに、ポルフィランに加工処理を施すなどして、作用物質の同定を進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海苔微粉末の脂質吸収促進作用の目的に、関与成分を抽出して、その脂質吸収に及ぼす影響や物性を調べる事を挙げている。現段階においては、最も脂質吸収に関係が深いと予想される海苔特有の水溶性食物繊維成分であるポルフィランを海苔から抽出し、その物性や脂質吸収に及ぼす影響について明らかにすることができた。したがって、達成度は、(2)おおむね順調に進展していると考えている。なお、海苔成分のインスリン様作用物質の分離・精製については、本年度は8月までしか研究ができなかったことから、次年度以降で研究を行う予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、9月から研究を中断したため、海苔成分のインスリン様作用物質の分離・精製については進める事が出来なかった。したがって、次年度以降に進めていく予定である。また、海苔微粉末の脂質吸収促進作用の解明については、作用成分の探索についてさらに進めていきたいと考えている。
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