Short-chain dehydrogenase/reductase (SDR) superfamilyに属するCBR1は、NADPHを補酵素として、生体内外の物質を還元する酸化・還元酵素である。その基質のひとつにアントラサイクリン系抗癌薬が挙けられる。本薬剤は、CBR1によってアルコール体へと代謝される。この代謝産物は、本薬剤が引き起こす重篤な副作用である心筋障害の原因物質であると考えられている。本年は、CBR1に高い類似性を示す新規酸化・還元酵素CBR3とCBR1のヒトオルソログ蛋白質の大腸菌を用いた大量調製系を確立した。カルボニル還元活性に対する複種類のテスト基質に対して、CBR3とCBR1の酵素活桂を測定したところ、CBR3はCBR1に比べ100倍程度低い活性しか示さなかった。Harr plot解析により、CBR1とCBR3のアミノ酸配列を比較したところ、触媒アミノ酸に近接する19a.a.の領域と、基質結合ループ領域と一致する14a.a.の領域を、保存性が低い領域といて同定した。この2つの領域に焦点を当ててCBR1とCBR3のキメラ酵素を構築し、その酵素科学的解析を行なっだ結果、CBR1とCBR3のそれぞれに特徴的な酵素科学的性質は、基質結合ループ領域に依存して発揮されていることが明らかとなった。本領域をターゲットとする阻害薬は、互いに類似するCBR1とCBR3に対して、特異的に働くことが示唆される。
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