近年、レスベラトールオリゴマーが様々な植物に存在することが報告されているが、その生理活性に関する知見は極めて限られている。それ故、レスベラトールオリゴマーを含む植物資源の有効利用は殆ど進んでいない。そこで本研究では、レスベラトールオリゴマーおよびそれらを含有する植物抽出物の生理活性を癌の悪性化を制御する腫瘍血管新生に焦点を当て、動物、細胞および分子レベルで解析することで、癌予防食品および癌予防成分としての有用性を検証することを目的とした。本年度は、東南アジア原産のある植物種子エタノール抽出物、およびその主成分であるレスベラトロールダイマーの血管新生に対する作用を検証した。その結果、1 .種子抽出物及びレスベラトロールダイマーが、vascular endothelial growth factor及びbasic fibroblast growth factor誘導性の血管内皮細胞の細胞増殖、遊走、管腔形成を濃度依存的に抑制することを見出した。2. レスベラトロールダイマーの管腔形成抑制作用が、レスベラトロールと比較して約11倍程度強いことが確認された。3. Western blottingによるシグナル伝達経路の解析により、種子抽出物及びレスベラトロールダイマーは、ERK1/2の活性化の抑制を介して、血管新生抑制作用の一端を発揮しているという知見が得られた。さらに、4.in vivo腫瘍血管新生モデルであるマウス背部皮下法において、種子抽出物を含んだ食餌を与えた群では、腫瘍細胞が誘導する血管新生が有意に抑制されることを確認した。以上の成果から、今年度解析した植物種子抽出物は、腫瘍血管新生に対して経口摂取で抑制効果を発揮し、その作用の一端は血管新生に関わる複数の内皮細胞の抑制に起因することが示唆された。さらに、その種子抽出物の主成分であるレスベラトロールダイマーが、in vitroで顕著な血管新生抑制作用を発揮することを見出した。
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