研究概要 |
本年度は,さまざまな疑似科学的信念が,どの程度知られ,また信じられているかに関する基礎データの収集を行った。263名の大学生が,34個のトピック(4つは科学的に正しいとされている話題,2つは科学の対象にはならない話題,28は疑似科学的,あるいは科学的に決着の付いていない話題)について,1)そのトピックを知っているか,2)トピックに関する主張は正しいと思うか,3)その主張は科学的な根拠があると思うかという問いに回答した。また,回答者の教育上のバックグラウンド,科学に対する態度,メディアへの接触頻度等のいわゆるフェイスシート質問についても尋ねた。 調査の結果,参加者は科学的話題と,科学の対象ではない話題との「線引き」は十分にできていた。28個の疑似科学的,あるいは科学的に決着の付いていない話題については,科学との「線引き」が出来ているトピックと,そうではないトピックに分かれていた。ただし,科学との「線引き」が出来ていないトピックの数は少なく,全体的には本調査に参加した協力者は,概ね科学と疑似科学の間の区別が出来ていたと言える。 また,少なくとも疑似科学的トピックを正しいと思うかどうか,また科学的根拠があるかどうかの評価と,当該協力者の教育的バックグラウンド(主として高等学校までの教育で「理系」中心であったかどうか)や科学に対する態度との間の関係は全体としては弱いものであった(ごく一部のトピックのみでしか,これらの変数間に相関が見られなかった)が,同時に一部のトピックで認知欲求とトピックの正しさ,妥当性の評価の間に弱いながらも相関関係が認められた。
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