研究概要 |
今年度のテーマは,最終フェーズとして授業の実施と授業結果の分析であった。研究は順調に進捗していたため研究計画を前倒しし,前年度から授業を実施している。今年度は,新たに作成した3Di教材の授業を協力中学校の生徒160名に対して実施した。これまでの研究成果および教育効果の調査は,AACEのE-learning国際会議で成果発表を行い好評を得た。 本研究では,仮想空間上の人体アニメーションである3Di教材を,モーションキャプチャを使い,初心者と熟練者の正確な動きを自由自在な角度から何度でも観察できるものとして開発した。この教材を使い,中学校技術科にて実際に授業を行った(研究期間合計で4校,約450名の生徒対象)。実施後教育効果を検証するため,アンケート調査を分析した。その結果,従来のビデオ教材よりも3Di教材の方が効果が高かったのは,生徒の興味関心,知識の深化,修練経験であった。動機付けモデルの観点からも,視覚的喚起機能が強いことからモチベーション向上を期待することができる。インターネット上で,人間の動作の比較観察が自在にできることを実証できた本研究からは,初心者が自習するための基礎トレーニングを目的とした観察教材としてビデオ教材以上の教育効果を備え,広く活用可能であることが示された。この知見は,ダイナミックな動きを伴う運動やダンスなどにおいても活用されることが可能であるだけで無く,学校外での学習提供の場としても仮想空間が利用できることを示唆している。言わば,児童生徒向けの技能のeラーニングへの第一歩を示せたと言えよう。 今後の課題は,こうした教材をデジタル教科書コンテンツとして利用する技術的な開発の他,観察した後に児童生徒が動作を行った場合に,その動きを定量的に評価することができれば,技能の遠隔指導の実現へさらに近づくことが可能になる。
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