研究概要 |
本研究は,これからの科学技術社会を生きるわが国の国民に共通に必要とされる科学的素養を構成する要素を明らかにするとともに,科学的素養を学校教育においてどのように育成していくか,具体的な理科教育カリキュラムを開発するための基礎的研究を行うことを目的としている。 そこで,本年度は,これからの科学技術社会を生きていく上で,わが国の国民に必要とされる科学的素養の具体的な構成要素は何かを検討するため,フランスの義務教育段階において育成が目指されている「共通基礎知識技能」を取り上げ,その具体的内容と策定プロセスについて分析を行った。その結果,以下の3点が明らかになった。 (1)「共通基礎知識技能」は,フランス国内における議論とともに,欧州や国際的な動向をも視野に入れて作成されており,(1)フランス語の習得,(2)1つの現代外国語の実践,(3)数学の主要原理と科学的技術的教養,(4)日常的に用いられる情報通信技術の習得,(5)人文的教養,(6)社会的市民的コンピテンス,(7)自律駐と自発性の7つのコンピテンスで構成されている。 (2)「共通基礎知識技能」を構成するコンピテンスの1つである科学的技術的教養は,宇宙や地球から自分の身体までを支配している主要な法則を理解するため,科学と技術により作られた社会に生きていくために必要とされる,知識,能力,態度で構成されている。 (3)義務教育段階のおわりまでに,すべての生徒に「共通基礎知識技能」を習得させることを目指した学習活動が展開されている。2009年度より実施に移されている学習指導要領は,児童・生徒が共通基礎知識技能を習得することを目指して作成されており,科学に関する教科は,科学的技術的教養の育成の中心を担うとともに,その他の運用能力の育成にも関わっていることが示されている。
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