日本が国際協力として行っている日本国内と東南アジア諸国(フィリピン,マレーシア)でのアフリカ科学現職教員の研修について,研修の観察,研修実施者,研修受講者へのインタビューにより,研修の概要と特色,日本と東南アジアでの研修がアフリカ帰国後にどのように活用されているかを明らかにした. 日本と東南アジアで行われている科学現職教員の研修の内容の分析の結果,次のことが明らかとなった.双方で最も多い内容は,科学授業の分析,授業案作成と実践,評価など科学授業に関する演習であった.国際協力での科学現職教員の研修の目的は,授業の質の向上であるが,日本と東南アジアでの研修は,そのために必要な科学授業に関する内容が演習を含めて実施されていた.日本の研修では,その次に多い研修内容は,学校や教育センターの訪問であった.また日本の研修では,日本の教育に関する研修内容にも時間がとられており,日本で研修を行う特色が出ている.他方,東南アジアの研修では,科学授業に関する研修内容に次いで多いのは,科学教育論に関する研修であり,ICTに関する研修内容もあった.その他に,帰国後の活用,科学施設見学などが日本及び東南アジアでの研修に共通した研修内容である.日本と東南アジアでの研修の違いは,日本では教育関連施設訪問と日本の教育に関する研修があり,東南アジアでは科学教育論とICT研修が重視されているという点にある. 研修受講者は,アフリカに帰国後に科学授業やアフリカでの教員研修に研修成果を活かしていることがわかった.また,日本の学校で見たことを帰国後に実践していることも明らかとなり,言語の違いがあっても学校訪問に一定の効果があることもわかった. 今後は,日本と東南アジアが連携しよりよいアフリカ科学現職教員向けの研修を提供できるか,本研究で明らかにした日本と東南アジアの研修の特色を踏まえて検討したい.
|