研究概要 |
本研究の目的は,講義や講演などの話し方が聴き手に及ぼす影響を調査することである.そして,聴き手にとって聴きやすく分かりやすい話し方の特徴を,音響的・言語的な側面から明らかにし,講義や講演における話し方トレーニング支援システムを構築する.目的を達成するため主に,次の3つのステップで研究を行う.1.音声データの収集と分析,2.有効な音声特徴量の決定と音声印象評価との関連付け,3.講演・講義音声の評価.本年では,主に1.にて度用意したデータを元に,2.と3.に取り組んだ. 2.については,有効な音声特徴量用意した音声,人間による評価結果を用いて,様々な話し方の特徴量と印象評価を関連付け,聴き手の印象に与える影響が大きい特徴量を調査した.調査の結果,特徴には,フィラー(いわゆる間投詞)やポーズの入れ方等が有効であることが分かった.また,新しい特徴量として,音声認識システムより得られる情報が有効であることが明らかとなった.講演・講義の音声認識率や音声中の母音・子音長等を用いることで,話し方の評価に密接に関連する声の明瞭性評価を行うことができた. 3.については,フィラーとポーズについて,音声の聴きやすさや理解しやすさに影響するフィラーの特徴を見出し,これらを用いて決定木を学習することで話し方をモデル化することに成功した.これを用いて,話し方の自動評価・アドバイスシステムを構築した.講演音声を本システムに入力すると,約80%の精度で人間とほぼ同じ評価結果を下すことができている.また,システムが出力する話し方の改善点のアドバイス通りに話し方を変えることで,聴きやすい音声になることが実験的に示された. 一方,音声認識システムから得られる情報を用いた重回帰分析により,声の明瞭性を評価することができた.これにより,講義・講演の声の明瞭性を点数化することに成功した.
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