研究概要 |
本研究課題は,同様の問題に対処する複数の学習者によるネットワーク上の協調学習空間において,問題に関して導出された様々な知識を集合知として抽出すると共に,抽出された集合知を活用することのできる学習基盤の構築を目指す. 本年度はまず,チャット上での議論から問題解決に有用な発言群を抽出し,その有用性に基づいて解導出知識グラフとして構造化する機構を構築した.発言間の関係と,協調学習中に学習者が解の導出に役立ったと感じた発言に対して付与するアノテーションを用いて,問題解決に役立つ一連の発言群を抽出する.また,アノテーションを付加した学習者の人数と包含関係をもとに,抽出された発言群の解法の相違とその有用性を特定し,同一の解法でより一般的な知識を含んでいる発言群ほど上位に配置されるように木構造を構築する.議論を話題ごとに区切るだけでなく,その解法と有用性に基づいて構造化することで,多くの知識から有用な発言群を探しやすい構造を提供することができた. また,同様の問題を一人で解いている個別学習者を想定し,解導出知識グラフを用いた学習環境の構築と,個別学習者の学習履歴を用いた解導出知識グラフの構造の洗練機能を構築した.個別学習者が解の導出に利用した解導出知識グラフ中の発言群に基づいて,解導出知識グラフを構成する発言群の有用性と他の発言群との包含計算を再計算し,解導出知識グラフの構造を変更する.解導出知識グラフを活用した学習者の履歴も考慮することで,解導出知識グラフをより知識の一般性を反映した構造に修正していく枠組みを生成できた.
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