研究課題
研究計画最終年度である平成22年度の目標は、成人学習者の特徴として指摘される自律性や能動性が、オンライン(eラーニング)の空間上でどのように学習行動および学習効果と結びつくかを明らかにすることである。特に、成人学習者やeラーニングの学習者においては用意された教材よりも、既有の知識を基盤に他者を情報源として学習する特性が指摘されており、このため、学習者間のコミュニケーションに重点を置いた学習行動の分析が有用になると予想した。このような分析を行うために、複数の大学により共用で使われているSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の履歴データを分析対象として用いた。分析の結果、SNSが支援する複数のコミュニケーションの形態のそれぞれについて、個々のコミュニケーションが授業等の公的(フォーマル)な学習に関連する場合と関連しない場合で、コミュニケーション手段の選択や学生間の結びつきのネットワーク構造上の特徴が異なることを確認した。このことは、学習者の集団の内部でのコミュニケーションがどの程度自発的で自然なものか、それとも公的な学習空間の設定に規定されたものであるのか、データを通じて相対的に判断することが可能であることを示唆しており、学習者の自発的なコミュニケーションによる学習を促す支援を考える上で有用である。また、同じ分析結果から、学習者の相互作用の数理的モデルについて、実証データに基づく考察が得られた。ここから、学習者間の相互作用と学習効果の関係について実証的分析とシミュレーション研究の両面によって明らかにすることなどがより具体的に期待できる。
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