本研究のテーマは、「サービスラーニングを通じた学習者の『学び』の変容に関する対話的評価の試み」である。とりわけ平成21年度の新入学生(北九州市立大学地域創生学群)を対象に「ポートフォリオ」の手法を活用して、学習者自身の自己認知とそれについての自己評価を主眼においた学習効果の評価実践を4年間にわたって実施することが目的である。 初年度は、学生と教員との間で、新たな環境に馴染みながら、同学群で学んでいく上で必要な、基礎的な知識の積み上げと関係づくりなどの準備期間として設定した。具体的な実施事項としては、同学群で開講される基盤教養科目や専門基幹科目、専門科目などの各講義、そして演習科目での学習を通じて、学生とのコミュニケーションの場をもった。こうした場面を活用しながら、「対話的評価」を行う上での関係づくりを行うことができたことは、今後の研究にとってたいへん意義のあることだと考えている。 また、サービスラーニングの学習効果についての基礎研究も行ってきた。具体的な実施事項としては、前任大学(立命館大学)で実施してきた体験型学習のプログラムを素材として、学生がサービスラーニングのプログラムを通じて、そこから何を学んでいるのかについてレポートをまとめた。「地域的な連帯」「専門知識の模索」「企画の発想力」「ボランティア活動の問い直し」といった気づきや試行錯誤の見られることが明らかとなった。いずれも、欧米の先行研究で明らかにされているような教育的意義の抽出にまでは至らなかったが、十分に能動的な学びが形成されていることを発見できたことを重視したい。また、サービスラーニングの学びの成果に関する評価方法を構築するための基礎的な検討作業となったことも本研究にとっては重要であると位置づけている。
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