本研究のテーマは、「サービスラーニングを通じた学習者の『学び』の変容に関する対話的評価の試み」である。平成21年度の新入学生(北九州市立大学地域創生学群)を対象に、学習者自身の自己理解とそれについての自己評価を主眼においた学習効果の評価を4年間をつうじて実施することが目的である。 22年度は前年で共有した基礎的な知識を踏まえ、講義科目と連動させながら「現場実習」に向かう年として設定した。サービスラーニング的な教育手法の実践として位置づけられる。プロセスとしての学生の「学び」についてデータを積み重ねる最初の時期となった。具体的には、地域での毎週の実習活動と毎月1回実施する活動の振り返りを積み重ねた。実習活動の主な内容は、北九州地域の老舗商店街の一画を活用した学生商店の運営である。活動の振り返りでは、商店の運営に関する課題(接客の仕方、イベントの実施、広報の仕方など)について省察と各月の目標設定を行った。本研究の課題である「対話的評価」については、主に後者の振り返りの時間でのレポート提出とそれを踏まえた指導教員との「対話」を通じて実施した。 本年度の成果としては、上記の実習活動と振り返りを踏まえ、商店街店主や商店街周辺の観光客に対して学生と共同でアンケート調査を行い、その結果にもとづき学生商店の運営目標を商店街に対して提案できたことである(これは学生と商店街との「対話」手段として活用されたため未発表にとどまる)。当初予定していた北米の大学での教育手法に関するヒアリングはできなかったが、報告者の所属する大学と地域の連携を通じたサービスラーニングの枠組みづくりに関しては一歩前進することができた。
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