本年度は当該研究期間の2年目ということで、以下の2点を中心に研究を推進した。第一に前年度に収集した授業データの分析である。第二に新たに必要となった授業データの補足収集である。データの補足収集として、本年度ターゲットにしたのは首都圏の荒れている学級である。当該学校の校長先生に協力をしてもらい、いわゆる"学級崩壊"を起こしているクラスの撮影の許可を得て、そのクラスの授業を中心にデータ収集を行った。また同時に、昨年度収集した授業データを基にした教員インタビューの実施も行った。実際に、授業を行っている映像を見ながら、それぞれのシーンで映像を止め、その際の教員の意図や教授方略についての質疑を行った。次に授業データの分析として、本年度に行ったのは、教師の教授行動のコーディングと授業の類型化である。実際の教師のノンバーバル行動をいくつかのコードに分類し、それを場面ごとに分割した授業に適用することで授業の類型化を試みた。 授業記録の分析および教師のインタビューの結果、以下の2点を明らかにした。第一に、教師は授業の中で、身体行動を用いながら授業運営と同時に授業マネージメントをしているということである。教室のざわめきが拡大しているときには、机間巡視をすることで、子ども一人一人に合わせた教育を行っていくのみならず、ざわめきを収束するように試みていることが窺えた。また、授業の類型化に関してでは、教師の身体行動のコーディングより、授業進行を目指す授業と、子どもとのコミュニケーションを重視する授業との二つに分類することが可能であることが示唆できる。授業は、限られた時間の中で本時の目的を遂行するという点がある。そのため、授業を進行させることをメインに考える教師と、そのような制約の中で、子どもとのコミュニケーションを重視する教師との二つのパターンがあることが推察できた。
|