研究概要 |
本研究は,(1) コンテンツに関する質疑応答の共有による他の受講者の存在が感じられる学習サイトの構築,(2) 質疑応答情報の公開状態を制御することによる学習効果の変化の評価,という2つの段階を通じ,「オンラインの学びの場」を提案することが目的である.初年度である本年度は,特に(1)の部分に対し,3つの内容に取り組んだ.第一に,研究の土台となるコンテンツの構築,第二に,コンテンツに関する質疑応答の共有による学習効果が期待できるかどうかの検討,第三に,教材を公開するためのシステムの構築,である.第一の,研究の土台となるコンテンツの構築では,大学生を対象とした数式処理システムの入門eラーニングコンテンツ(80分間分)を整備した.第二の,コンテンツに関する質疑応答の共有による学習効果の検討では,合計3回の模擬受講による質疑応答収集とアンケートを実施した,1回目の受講は,27名の数式処理システムになじみのない受講者に対し,コンテンツを教員が説明する通常の講義形式で実施した.2回目の受講は,4名の数式処理システムの操作に熟達した受講者に対し,eラーニング形式で実施した.3回目の受講は,24名の数式処理システムになじみのない受講者に対し,eラーニング形式で実施した.これにより,160件以上の質疑応答データを収集した.また,アンケート結果より,eラーニング形式では,コンテンツが難しいと感じられる受講者ほど,他の受講者の質問を好意的に捉える場合が多く,質疑応答の共有化の有効性が示唆された.第三の,学習サイト運営開始のための準備では,教材配信のためのサーバを構築し,学習マネジメントシステムMoodleを利用した学習サイトの公開準備を実施した.次年度は,本年度の研究成果を学会で発表すると同時に,学習サイト上にて,収集した質疑応答情報を公開する仕組みを構築し,学習効果を検討する予定である.
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