研究概要 |
本研究は,(1)コンテンツに関する質疑応答の共有による他の受講者の存在が感じられる学習サイトの構築,(2)質疑応答情報の公開状態を制御することによる学習効果の変化の評価,という2つの段階を通じ,「オンラインの学び場」を提案することが目的である.21年度の取り組みでは(1)の部分に注力し,研究の基礎となる教材を構築し,教材を用いて講義型式・eラーニング型式で学習者のデータを収集した.22年度の当初の計画は(1)と(2)にまたがる内容で,21年度に取得したデータの分析を実施し,質疑応答を盛り込んだ教材を作成し,データを収集するというものであった.第一の取り組みである,学習者のデータ分析では,講義型式とeラーニング型式,各方式で得られたデータの比較からは,講義型式においては,教材の難易度が低下する一方で,学習者も受動的になる傾向が見られた.eラーニング型式においては,教材の難易度に対しては高いと評価を受ける可能性があがる一方,学生の主体的な取り組みが高まり,また,他の学習者の質疑応答が内容理解の手掛かりになったという回答が増加した.他方,収集された質疑応答からは,学習者からの質問に偏りが見られ,学生の学び方の個性が教材の評価を行う際に参考になることが期待された.そこで,当初の計画を変更し,学習者の得意とする「思考特性」を調査する手法である,エマジェネティックスと,教材を組み合わせたデータ収集を小規模に実施した.エマジェネティックスによる分析の結果と,教材に対する質問・アンケート結果とを組み合わせた分析では,質問の偏りは思考特性と関連がある可能性が大きく,本研究の教材と学生との間に,理解しやすい説明方法といった観点からの相性が存在する可能性が明らかになった.そこで,23年度へ予算の繰越を実施し,生じた猶予期間で教材に対して多面的に質問とその答えを収集した教材を構築し,学習者のデータの収集を実施した.
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