子どもが被災時に自主的な避難行動を可能にするためのアイテムとしてナビゲーション機器の開発を進めている。研究1では、現行の市販ナビ製品のコンテンツ分析および子どもを対象としたモニター調査を行い、理解可能性を検討した。その結果、店舗アイコン等の精緻性が以前と比較して理解を容易とし、これらランドマークの系列記憶により4歳児でも未知の地域で移動可能な事例があった。ただし、地図記号をはじめランドマークとなりうる対象が大人とは異なることから、今後、大規模調査が望まれる。研究2では、経路指示標識の適切性、理解可能性について保護者から幼児への個別アンケート調査を行った。その結果、基本的な自動車道路標識について歩行者の行動として解釈可能なこと、独自の指示標識を形情報と色情報が異なる場合、色情報に基づく解釈が試みられること等が明らかになった。研究3・4では、リアルタイムウォークスルー型の情報提示様式で仮想避難実験を行い、利用可能性を検証した。その結果、鳥瞰地図型と比較して理解しやすいこと等が正誤反応、RT(反応潜時)、印象評価を基に明らかになった。また、付加情報については、避難時のナビゲーションにおいて警告音の併用が画面への注意喚起に有効だが、音声ガイドは最後まで聞き入ろうとすることでかえって行動反応を遅らせることが明らかになった。なお、リアルタイムウォークスルー型は視覚情報との合致(類似)により、理解しやすいものの、画面への過剰注視が生じ、現実空間への注意低下が課題となった。
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